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ベトナム 2/雪(中村季節)

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『ベトナム 2/雪』
2025年11月30日 発行
著者:中村季節

【ベトナム2/雪】
そこらのチワワよりビビリでペーパードライバーの〝私〟がベトナム大群バイクの一味に加わるまでの旅の記録。上下巻の下。

一月三十一日(水)
 帰り道はすこし薄暗くて、ライトをつけて走る。どんどん暗くなる。いきなり夜道の運転かよ、と私は手に汗をじっとりかいていた。山間部を走っているうちに山の緑がどんどん紺色にかわっていく。光が、前を走るルーベンバイクの後部座席のジュリアの後ろ姿が見える。たまに対向車のライトがみえると、身体がキュッと縮こまった。私が運転を怖がるようになったのは、20歳ちょっとのとき免許をとったばかりの元彼の車で、事故にあってからだろうか。兵庫県の山道を走っていて、前からやってきた大きなトラックにびびった元カレが歩道の縁石に派手に乗り上げて、タイヤがだめになってしまったのだった。助手席の私は、衝撃をもろに受けてしばらく喋れなかった。車からどうやって降りたのだろうか。元カレは完全に意気消沈して使い物にならなかったので、私がレンタカー会社と、JAFに連絡をして、それから近くのガストで飯を食いながらJAFを待ち、手配された代車で京都まで戻る道すがら男を励まし続けた。私はこの男の、パスタをひきずるようにすする音が嫌で別れたと思っていたが、理由はそれじゃなくて、こういうところだったような気がする。金のないそいつの代わりに車体の修繕費5万くらいを払って、ほどなくして別れた。
私はその時、テキパキと動いてはいたのだが、本当は怖くて仕方がなかったのだと思う。泣きたかった。怖いよう、ぶつかって死んじゃうかと思ったよう、と取り乱して涙をぽろぽろ流すのを男になぐさめてもらいたかったし、関係各所への連絡だってお前がやれよと思っていた。いやお姫様かよ。私の精神の奥深くにはお姫様が住んでおり、表面には肝っ玉母ちゃんがいる。その間くらいがちょうどいいのだがなかなかそうもいかない。ホセは、私のお姫様をまた刺激してくれる。左折のたびにとまどう私のバイクに寄り添って対向車を手で制してまで私が安全に曲がれるようにサポートしてくれるのまじで騎士(ナイト)じゃねと思った。ハオランは王子でホセはナイトだな。このふたりで少女漫画一本かける。昔、漠然と自分は中国人かスペイン人と結婚するのでないか、と思っていた。なぜなのかわからないが、そう思っていた。今でも根拠が見つからないが、私のお姫様の相手をしてくれるのは奇遇にも中国人とスペイン人だった。

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